ブロードストリート事件

 

疫学により,人の健康が守られた歴史的事件として,

ブロード・ストリート事件があります。

これは,1848年,その時点では全く知られていない

コレラ菌による患者が大量発生した地区で患者発生状況の調査を行い,

ある井戸を汚染源と推測,「汚染された井戸水を飲んでいる人は罹る」と結論づけ,

問題の井戸を封鎖しました。このため,それ以上のコレラの流行の蔓延を

防止することができたという事件です。

 

他方,コレラ菌の発見は,1883年です。

したがいまして,ブロード・ストリート事件は,

コレラ菌発見の約35年前の事件です。

仮に,コレラの原因及び因果関係につき科学的な証明がないという理由から,

被害防止対策を取らないという態度に出ていたならば,

約35年間にわたり,コレラによる被害・死亡が野放しになっていたことになります。

 

このようなことが,残念ながら日本では行われなかった。

広島・長崎でも,水俣でも,被害者は救われず,被害は拡大を続けた。

 

この点について,

 

医学者は公害事件で何をしてきたのか (岩波現代文庫)

医学者は公害事件で何をしてきたのか (岩波現代文庫)

 

 水俣病事件によって,

地域住民・地域社会は大きな痛手を受けた。

漁業は壊滅的な影響を被った。

そして,チッソは今も存続しているとはいえ,かつて日本の化学工業を

リードした面影は無い。

ところが,水俣病事件によって,大いに潤った人々が居る。

学者である。

国・熊本県が認定問題を巡って水俣病関連訴訟の被告になってから,

国から支給される水俣病研究費はどんどん増加していった。

(中略)

最大の争点になっている点についての研究には,

実は国からの研究費はほとんど使われていない。

重要な問題を研究しようという研究者には,

研究費が配分されなかったからである。

 

 

日本の学者の意見は,金や叙勲で簡単に買える現状があります。