終わりなき危機2

 

 

1950年10月1日に行われた追跡調査では,生存者全員が対象となった

とはいえ,1965年まではすべての人が被曝量を特定できるほどの

面談調査を受けていなかった。

これが疫学者のいう「不死の時間」現象を生む。

つまり,爆心地付近にいた生存者の発症率を計算する際の分母を増し,

低い発症率を導き出し,放射線リスクの過小評価に繋がる。

より重要なのは,爆心地から3キロ以内にいた生存者のうち,自分の居場所や

遮蔽物の有無の情報が不十分で被曝量が特定できず,

調査対象から除外された人たちだ。

その一方で,爆心地から3キロ以上離れていた生存者は,同様の情報不足を

理由に除外された人はひとりもいない。

除外された人は,調査対象となった生存者に比べ,とりわけ追跡調査の早い段階で

がんや白血病で亡くなる率が高かった。

爆心地近くにいた生存者だけが除外され,遠方にいて被曝量が少ない

生存者は除外されなかったので,放射線リスク評価は低くなっている。

被曝量によって除外することで偏りを減らす従来の統計的手法は,

リスク評価の補正に採用されなかった。

 

と指摘しています。

また,子宮内で被爆した生存者については,対象者が少ないという理由で,

リスク評価における線量反応関係を発展させる役には立ってこなかったことを

指摘した上で,

それが,WHO福島報告のリスク評価において,

子宮内被爆に起因する病気を除外した理由と指摘した上で,

 

1950年代,アリス・スチュワート博士によって産婦人科のX線が

小児がんを引き起こすと初めて証明されて以来,胎芽と胎児が

低線量の放射線にとりわけ敏感なことは広く知られている。

メルトダウン後の早い時期に福島第一から放出された放射線を浴びた

胎児の数が,のちに被爆した人数に比べて少なかったとしても,

特に影響を受けやすいこうした胎児はリスク評価に加えるべきである。

 

と指摘されています。

 

ここで思い出すのが, 国連グローバー報告です。

 

福島原発事故・1mSvを基準に住民保護を~国連グローバー報告・勧告に基づく政策の転換を(伊藤和子) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

特別報告者は「健康の権利」にフォーカスしているため、福島県が行っている県民健康管理調査の問題点についても詳細に指摘し、改善を具体的に勧告をしている。

特に重要なのは、低線量被ばくの危険性に鑑みれば、福島県に限定するのではなく、年間1mSv以上の地域に居住するすべての住民に対して、包括的で長期にわたる健康調査をすべきだ、と明確に勧告している点である。

また、特別報告者は、子どもに対する検査は甲状腺だけでなく、血液や尿検査も含むべきだ、と明確に指摘している。

現在行われている子どもに対する甲状腺検査については、甲状腺にしこりがある子どもについても、画像や検査結果を渡そうとせず、「結果を渡してください」と親が頼んでも情報公開手続を通せというのが県のスタンスであり、セカンド・オピニオンも封殺してきた。こうした事実も指摘し、すべて改善すべきだ、と指摘している。

 

 

上記報告に対して,日本の回答は,

 

アナンド・グローバー報告に対する日本政府の血も涙もない非常な反論ー年間1ミリシーベルト以上の地域の健康検査と尿検査、血液検査についての日本政府の回答ー: ココログ里子のブログ

 

この意見にはいくつかの事実誤認が含まれるものの、勧告は既に実施済みである。

尿、血液検査には科学的根拠が乏しく、この勧告を受け入れることはできない。
子どもの健康調査は、甲状腺超音波検査に限定されていない。
77 (b)で述べた通り、尿検査と心電図検査が、既存の健康診断で実施されており
血液検査は放射線量が比較的高い地域で実施されている。
このような検査は、検査が科学的に要求されるか、その必要性が指摘されるかにより選択される。
国連特別報告者が推奨する検査の必要性は、科学的根拠を伴わないものである。
健常者への健康調査実施は稀であり、そのため多くの研究者は、研究を行うことに関心を持っている。
しかし、日本政府は不必要な検査を強制することには同意できない。

 

勉強するにつれて,疫学の観点の重要さがわかります。

影響するかしないかを解明するために検査をするのです。

それを,はなから不要だときめつけて,検査すらしなければ,結果はでません。

 

これでは,結果が出ないための検査をしない

と答えたほうがよっぽどすっきりします。

 

見えない世界だからこそ,解明しない。

そのさきにあるものを考えると,震えが止まりません。