医学者は公害事件で…3

ひきつづき,体調不良が続いておりますが,

今日もこの本で勉強します。

 

 

医学者は公害事件で何をしてきたのか (岩波現代文庫)

医学者は公害事件で何をしてきたのか (岩波現代文庫)

 

 

疫学的方法論が日本ではあまりに知られていないため,

我が国の医学生物学者の中には,

いまだに実験こそが科学と信じている者が多い。

医学部を卒業し,医学博士号を多くの同僚が取得するので

自分も取得した方がいいのではと思い,

さあ学位論文のためにどのような研究をすればよいのかと考えた

医学部出身者も多いと思う。

その際に多くの研究者が用いる方法が動物実験や細胞実験である。

まだ自分は若いからもっと臨床技術の向上に専念したいのに,

どうして動物や細胞・遺伝子を相手に格闘しなければいけないのかと

悩んだ経験のある医学研究者も多いだろう。

疫学は,若い医学研究者をこのような悩みから解放してくれる。

研究計画をきっちりと組み立て,

患者などのデータを集める対象者,医学論文の元になる

データを日常診療から集めることができる。

これが今日「科学的根拠に基づく医学」と呼ばれる,

医学医療の「根拠」を集めるための疫学的方法論を用いた臨床研究である。

(中略)

「私は実験結果を見ないと信じない」と叫ぶ年配のウィルス学者も居るが,

そもそもこうしたウィルス学者は,疫学がどのようなものかも知らない。

所詮はアンケート調査のたぐいと漠然と考えている可能性がある。

 

このレベルということに驚きました。

また,このときに感じたのが『漠然と考える』ことの危険性です。

意図的にか,無意識にかはわかりませんが,漠然と,曖昧な

ことばを入れることにより,抽象化してごまかす。

そのような歴史が繰り返されてきました。

実験結果をみないと信じないと抽象化している限り,

見えない放射線の影響は,見える技術が出されるまで先送りされてしまいます。

そして,広島・長崎での被害は福島につながり,

歴史は繰り返すのです。